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『帝国海軍の馬鹿やろう』
〜 終演の挨拶 〜
本作品を書くにあたり、正直迷った。
以前にも戦争を題材に本を書こうとしたが、描く事が出来なかった。
戦争を経験していない私が戦争を題材にしていいのだろうか?
そんな時、父方の伯母が入院したと聞いた。伯母にはとても可愛がってもらった。
伯母は戦争体験者だ。
死んだ父も。
そういえば父が死んで10年。色々思い出し、そしてこの本が生まれた。
太平洋戦争末期、私の父は19、20歳で朝鮮の京城帝国大学、今の韓国ソウル大学にいた。医学生だった。
命からがら逃げて日本に帰って来たようだ。多くの友人をあの戦争で亡くした。
これは祖母や母から聞いた話だ。
父本人の口からは戦時中の話は一切聞けなかった。語ろうともしなかった。
それ程辛い思いをしたのだろう。
父の兄である伯父は軍医として陸軍に所属していた。出陣学徒壮行会にも参加し、神宮外苑競技場を行進したらしい。
伯父もまた多くの友人を亡くした。
兄弟揃って勤勉で死ぬまで医師として勉強を続けていた。
そして死の寸前まで生きる事を諦めなかった。
それは生への執着、死への拒絶のように私には思えた。
この帝国海軍の馬鹿やろうは、父、伯父、伯母が体験した事を基に描いた作品でした。
あの時を生きた人々にも笑顔は有ったはず。希望は有ったはず。
学生の頃の父は笑顔で写真に写っていました。 |
2013.10.4 小坂逸 (脚本・演出) |
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